改訂版天女座物語5
〜毎日新聞のコラムより〜
栗須道夫さんは、高校生の時に、ばく転をしていて頭から落ち、以来十七年間、四肢麻痺となり寝たきり。首から下は全く動かない。そんな状況の中でも、絵筆を口に加えて絵を描いたり、ホームページを立ち上げてメールで交信したりと前向きに生きている。
私が熊野で初めて制作したCDのジャケットは、栗須君の「熊野古道を使わせてもらった。一番遊びたい盛りに寝たきりとなった彼のもどかしさ、絶望を考えると本当に胸が痛い。
それを乗り越えて優しい笑顔を向けてくれる栗須君は、どんな高僧よりも悟っているかもしれない。昨年、CDが出来たのを記念してクリスマスコンサートを企画した。コンピューターを使うのに体が横向きになるので内臓に負担があると聞き、チャリティーコンサートをして、天井からパソコンを吊るせるラックを作るための資金を彼に渡したかった。彼の友人もたくさん駆けつけてくれ、いっしょにクリスマスを楽しんだ。まさか、CDジャケットになっているとは知らない栗須君は、出来たてのCDをプレゼントすると本当に嬉しそうに笑ってくれた。呼吸器をつけているので、会話はほとんど出来ないのでお母さんが通訳をする。
「こんなにもたくさんの皆さんが僕のために集まってくれて本当にありがとう。」彼の挨拶に参加者は、感動した。昨日、借金を抱えて途方にくれているという人にどうやって励ましたらいいかというメールが知り合いから来た。真っ先に栗須君のことを書き、首から下は、動かない彼が前向きに生きているのだから人間は何でも出来るパワーを持っていることを伝えて欲しいと返信を打った。彼は、私達に勇気と希望を与えてくれる。今、栗須君は、パソコンで絵を描くことに挑戦している。絵の具を混ぜたりすることで、母の手をわずらわさないために。今度、彼の描いた「楯ケ崎」の絵を使ったCDの第2弾が出来る。美しく優しい絵である。